安田善次郎とは、安田財閥という日本最大の財閥の一つを興した明治時代の大富豪です。安田財閥は、現在のみずほ銀行、損保ジャパン、明治安田生命などの元になった財閥です。安田一人の財産が当時の国家予算の8分の1を独占していたと言われているので、今のお金持ちとは桁違いです。でも、お金持ちになるための哲学は、意外なほどに堅実です。
安田善次郎の説く勤倹貯蓄
安田善次郎の生涯を描いた「金持ちになれる道」には、彼が15歳のときに商人として生きることを決意したときに、以下の3つの誓いを立てたといいます。
- 他人を頼らない。一生懸命に働き、遊ばない(ここでいう遊びとは、特に女遊び)
- 嘘を言わない。正直者でいる。
- 生活は収入の8割以内にとどめ、2割は必ず貯蓄する。
彼は何としてでも金持ちになり、身を立てるためにこの3つの誓いを立て、そのために生涯「勤倹貯蓄」に励むようになります。
勤倹貯蓄といっても、ただひたすらケチになるというわけではなく、必要以上に身の丈に合わない無駄遣いをしないという意味です。
実際、彼は生活は質素を心がけていたものの、東大の安田講堂、日比谷公会堂などの寄付をしています。
必要なところには、お金を惜しむことはありませんでした。
「勤倹貯蓄」とは、ただ倹約してお金を貯めるだけではなく、「勤勉にかつ節約を心がける」という意味です。
なぜ勤倹貯蓄なのか?
なぜ安田善次郎は勤倹貯蓄が必要と考えたのか。
それは、生活の基礎を確定することが、激烈な生存競争を生き抜くための武器であり、防備でもあるもので、そのために必要なものが貯蓄だからです。
ビジネスの成功哲学を書いた本では、頭の良さ、リスクに果敢に挑戦すること、入念な計画、圧倒的な行動力といったことが成功要素として書かれていますが、そんなものより、最も大事なのは資本(お金)であると安田善次郎は言います。
「資本などはどうでもよい、、頭脳が優れていることこそ重要だ。つまり計画、運用、積極的で素早い行動こそ必要であって、これさえあれば資本などは最初から問題にする必要はないのだ。」
などといって、あたかも冒険小説のようなことを言う人もいるようだが、私はそれに賛同することはできない。なぜならば、私はやはり、どこまでも資本こそが一番の問題となるものだと信じているからである。
(金の世の中より)
「宵越しの金は持つな」という言葉もあれば、「有り金は全部使え」といったカリスマ経営者もいます。
この言葉の是非はわかりませんが、それを言い訳にして、私を含めた多くの凡人は無駄遣いを繰り返します。
あるいは、スティーブ・ジョブズの「connecting dots(点と点をつなげる)」という言葉を借りて、ただの浪費を「点と点をつなぐための自分への投資」などと自分に言い聞かせることもしてしまいがちです。
何が自分への投資で、何がただの浪費なのかを見極めることは難しいですけど、いずれにしても、安田善次郎が言うように、一定の貯蓄がないと余裕がなくなり、病気や事故に遭ったときに対処ができなくなります。
勤倹貯蓄に励むことは信用を築くことにもつながります。
腕や才能があっても、「確実な人物」でない人には金庫の鍵は預けられないし、支配人のような責任ある立場にも置けません。
信用があれば、上司や取引先から過度な干渉なく自分のやりやすいように仕事ができ、有利な条件で取引ができるかもしれない。
信用があると、商売がしやすくなります。
そして、信用を築くためには、勤倹貯蓄に励むことが最も重要です。
どうやって貯蓄をするのか?
冒頭で述べたように、安田善次郎は、収入の8割で生活し、残りの2割は必ず貯蓄に回すという方法で富を築いてきました。
日々の生活費をどのように使うのかについては予算表を立てて、この予算を何としてでも死守していきます。
予算表は、以下のような項目で作成をします。
- 経常費(食費、日用品、家賃、光熱費など)
- 給与費(教育費、交際費、娯楽費、家族への小遣い、社員の給料など)
- 義務費(税金、寄付金、借入金の返済)
- 保険料(生命保険、損害保険、子どもの結婚費用、家のリフォームなど)
- 予備費(病気や災害に備えた貯蓄)
収入がどれぐらいあるかによって貯蓄できる金額は人それぞれですが、金額の大小ではなく、少しずつの積み重ねの重要性を安田善次郎は説いています。
塵も積もれば山となる。大海も一滴の水より成り、千里の道も一歩より始まり、地球も一塊の土・一滴の水よりなるものである。
また、貯蓄をコツコツと続けることは、お金という目に見える資産を築くことだけでなく、自律や克己心といった無形の資産を築くことにもつながります。
まとめると、安田善次郎がいう金持ちになる方法は、一生懸命に働き、一足飛びに成功を求めようとせず、コツコツと信用を築きながらお金を稼ぎ、必要以上に無駄遣いをせず、貯蓄に励むということでしょう。
現在にとっては、そこまで目新しいことではないかもしれません。
同じことをやっても、安田善次郎のような大富豪になれるかはなんともいえません。
しかし、結局のところお金持ちになるとか仕事で大きな成果を上げるための方法は、100年以上前から大きく変わらないということでしょう。
テレビやネットでは、株やビットコインで一山当てた人や、AIを駆使して新しいビジネスを立ち上げた人がよく出てきます。
NISAをやってみてもいいでしょうし、ChatGPTを仕事で利用してみるのもいいでしょう。
しかし、そんなことよりも、会社員でも独立している人でも、
- 天引きで貯金をする
- 酒やタバコはやめる。もちろん夜の店にも行かない
- 株をやる場合でも、売り買いで儲けるのではなく、配当を得られるような安定した会社に投資する
- 病気で仕事ができなくならないように、よく寝て、よく食べる。
こういった「当たり前」で「地味」なことの積み重ねが、私たちのような凡人が貯蓄を積み上げるための唯一の道ということでしょう。
▪️編集後記
昨日はオフ。お宮参りの写真を受け取りにスタジオへ。可愛く仕上げてくれました。
その後、私の実家で写真を見ながらお昼ご飯。
▪️娘日記
日中は静かなのですが、夜になるとテンションが上がるのか、よく泣きます。
食欲も夜の方が旺盛な気がします。