給与計算はけっこう複雑なので、給与計算ソフトを使うことがおすすめですが、社員を雇っておらず、社長ひとりであれば、Excelで給与計算をすることも難しくありません。
給与データの作成
作るものは以下の3つです。
・給与データ
・仕訳データ
・預り金(源泉納付)の集計データ
まず、給与データを作成します。ここが給与のデータベースになります。
役員報酬、通勤手当はあらかじめ決めた金額を直接入力します。基本的に役員報酬は1年間変わらないはずなので、同じ金額になるかと思います。
社会保険料の計算
健康保険、厚生年金の料率は、健康保険協会のホームページで公開されています。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r06/r6ryougakuhyou3gatukara
上記のページからExcelをダウンロードすることもできるので、以下のExcelファイルを給与計算のExcelにコピーします。
コピーできたら、XLOOKUP関数で健康保険料、厚生年金の金額を飛ばすようにします。
以下のような関数を入れます。
役員になる方が40歳~64歳になるかどうかで介護保険料が加算されるので、社長以外に役員や従業員がいる場合には、年齢などで関数を分岐させる必要があり、複雑になります。しかし、社員を雇っていなかったり他に役員報酬を支払う役員がいなければ、関数はシンプルにできます。
厚生年金についてもXLOOKUP関数を使って社会保険料の金額を計算し、「総支給額ー社会保険料」で課税対象金額を計算します。
所得税については、国税庁のホームページで公開されています。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2023/02.htm
扶養親族の数によって金額が変わりますが、今回は扶養親族が2人の場合で関数を作成します。
住民税は、特別徴収の場合は会社に住民税の通知書が届きますので、その金額を入力します。普通徴収の場合は会社で納付しないので、ゼロになります。
「役員報酬+通勤手当」の総支給額から、社会保険料・所得税・住民税を差し引いた金額が最終的に役員に支給する金額です。
最後に、会社負担分の社会保険料も計算します。役員に支給する金額には影響ありませんが、経理のときには会社負担分の社会保険料は費用になるので、経理の基礎データとして計算をしておきます。
関数は、従業員負担分の健康保険、厚生年金と同じです。
また、会社負担分には、「子ども・子育て拠出金」があります。令和6年度の場合、「標準報酬月額×0.36%」なので、あらかじめ社会保険料のシートの横で金額を計算して、その金額をXLOOKUPで給与データに出すようにします。
給与データはこれで完成になります。あとは、経理をするための仕訳データと、振込をするための預り金のデータを集計しておきます。
仕訳の作成
給与計算の結果を経理するときは、以下のような仕訳を入れる必要があります。
「役員報酬」はそのまま役員報酬の金額を、「旅費交通費」は通勤手当の金額を費用にします。
「法定福利費」は、会社負担になる健康保険、厚生年金、子ども・子育て拠出金の合計になります。XLOOKUP関数を使ったほうが、後々楽になります。
社会保険料の役員負担分、所得税、住民税については、預り金にする必要があります。負担するのは役員で、会社は代わりに払うだけなので、「預り金」となります。
仕訳データを作成したら、会計ソフトにこの仕訳データを入力します。
クラウドで銀行口座と連携していても、法定福利費や預り金の金額は自動では計算してくれません(給与計算ソフトを使わない限り)。
給与計算ソフトを使わない場合は、手入力で経理をする必要があります。
預り金の管理
役員が負担する社会保険料、所得税、住民税については、会社で毎月、あるいは半年に1回納付する必要があります。
社会保険料や住民税は毎月口座引落やeLTAXなどで納付をしますが、源泉所得税は社員数が10人未満の場合、申請をすれば半年に1回まとめで納付できる特例があります。
ただ、半年に1回だといくら払えばいいのかわからなくなることもあるので、Excelで管理をしておくといいです。
上記の様な感じで毎月の金額と、半年に1回の納税額をまとめておくと、実際に納付をするときに便利です。
また、BSに上がっている「預り金」の金額の残高チェックにも役立ちます。
手間はかかるが、給与計算の仕組み理解にもなる
ここまでExcelで作成するのはそれなりに手間ですし、間違うリスクもあるので、給与計算ソフトを使うという選択肢もあります。
ですが、一度Excelで自作してみることで、給与計算の仕組みを理解することができます。
会社員のときだと給与明細を見ても、何となくいろいろ引かれてるなー、としか思わないものですし、検算したりはあまりしないと思います。
何でも自分でやってみることで理解が深まるものです。」
▪️編集後記
昨日は経理支援業務。
奈良市に移住したことによる移住支援金のことについて問い合わせや資料の準備をしていました。
子育て世代が東京に集中していることの対策として、地方に移住した人への支援金があるのですが、要件がサラリーマンが前提であったりして、個人事業主だと厳しそう。「働き方って要件に関係ある?」と思ったりするのですが、仕方ないですね。