「お金のむこうに人がいる」という名著を読んで、「数字のむこうの人を見る」という格言を思い出しました。会計というとお金とか数字というイメージがありますが、その向こうには人の動きがあり、それを見るようにしないと会社のことはわからないということだと思います。
「お金のむこうに人がいる」
「お金のむこうに人がいる」というタイトルも素敵ですが、内容ももちろん面白いです。
いくつか印象に残った要点を上げます。
- 我々がお金を使ってモノを手に入れるとき、消費しているのはお金ではなく、誰かの労働である。
- お金のむこうには必ず人がいる。あなたのために働く人がいる。
- 1000円のワインの価値は1000円ではない。誰かを幸せにする効用である。1000円のワインがおいしいと感じる人は、味がわからない人ではなく、いいところに気づくことができる幸せな人である。
- 日曜日にお金を使うためには、もちろんお金を貯めておくことも必要だが、日曜日にお金をもらって働く人の存在が不可欠である。全ての人がお金を使おうとすると働く人がいなくなり、コンビニもレストランも開いてないし、電車も動かなくなる。
- 高齢化社会で年金が問題なのは、受け取る年金が減ることや年金保険料が増えることよりも、将来の高齢者のために働く人が減ることである。
生きていくうえでお金は必要なものですけど、お金で世の中が動いているわけではなく、お金のむこうで誰かが自分のために働いているからこそ、社会は成り立っている。
お金のことだけを考えるのではなく、そのむこうにいる人に目を向けないと経済はわからないものなのでしょう。
会計の世界にも似たような考えがあることを思い出しました。大学の時の先生が、「会計を学んで仕事にするなら、数字のむこうの人を見る必要がある」と話されていたのは印象に残っています。
数字のむこうの人を見る
会計の仕事(監査とか経理とか)をしていると、いろんな数字をずっと見ることになります。
決算書はもちろん、決算書の元になっている試算表とか、その元になっている明細、さらにその元になっているデータベースなど、いろんな数字とにらめっこします。
そういうのが苦にならないというか、楽しいからこの仕事を続けているのですが、ただ数字を見ているだけだとマニアになるだけです。
人件費が急に増加している資料を見て、「人員を増やしたから」だけでは分析になってません。
なぜ人を増やすことになったのか。新規出店をすることを決めてスタッフが必要になったのか、上場を目指すことにして経理や法務の体制を拡充することにしたのか。
会社で働く人の決断とか行動の結果が決算書に表れてくるものです。
経営分析というと、●●比率とか▲▲レシオというような指標の話がよく出てきますが、そういう指標をいじくるだけでなく、数字の裏にいる人の動きを想像することが必要です。
最低限それぐらいの意識は持っておかないと、粉飾のような会計不正なんてほぼわからないでしょうね。
会計は「お金を見るもの」ではない
「会計」と聞くと「お金」とか「数字」というイメージがありますし、実際そのイメージどおり数字をずっと見る仕事なんですけど、数字だけ見てても何かがわかるものではありません。
数字は人が動かすものです。
人の動きとか考えまで深めていくことが分析には必要です。
会計の数字は人が動かすものですから、悪用すれば悪いように数字を動かすこともありえます。粉飾なんかは典型例でしょう。
粉飾まではいかなくても、会社が作る決算には少なからずその会社や経営陣の思惑とか主張が混じっているものです。
今期に赤字をたくさん出して、逆に翌年V字回復を演出したりとか、販管費と原価を調整して粗利を良く見せたりとか(度を越すとアウトな方法ですが)。
そういうことは数字だけ見ていても感づかないものです。
数字や決算書のむこうにいる人を見ることが、会計に関わる者として必須のスキルではないかと思います。
▪️編集後記
昨日は経理業務支援を2件。新規のお客様と打ち合わせ。
会社設立の準備やセルフマガジンの作成といった事務作業も。新しいことをするのは楽しいですね。